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Fenderマスタービルダー特集:ジョン・クルーズを徹底解説

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Fenderマスタービルダー特集:ジョン・クルーズを徹底解説

2020年6月、Fender Custom Shopnのマスタービルダーの中でも不動のナンバーワンビルダーといっても過言ではないJohn Cruzが、Fender社を解雇されたというショッキングなニュースが流れた。

それと同時に、「今後生産するアーティストモデルはどうなるのか?」、「独自ブランドは立ち上げるのか?」、「現存の個体が値上がりするのか?」など様々な思いを抱いたファンの方も多いことだろう。

騒動も少し落ち着いたところで、この記事ではJohn Cruzのビルダーとして経歴から解雇理由までをおさらいし、さらにJohn Cruz作品の特徴や、現状の市場相場観などにも言及して徹底解説していく。

少々長くなるが最後までお付き合いいただけたら幸いである。

John Cruzの歩み

John Cruzの歩み

(画像参照 https://www.makenmusic.com/pages/john-cruz)

Fender入社からマスタービルダー昇格以前

John Cruzのビルダーとしてのキャリアは順風満帆そのものであった。

Fenderに入社したのは1987年、塗装セクションやネックセクションなど様々な業務を経て1993年にはCustom Shopの一員となり、そして翌年1994年ごろから彼はRelicギターの監修という大きな任務を得るなど、若くして早くも頭角を現す存在であった。

1994年当時Fender社内にRelic部門は存在しなかったためVince Cunetto(ビンス・クネット)という人物に外注という形でRelic加工を依頼していた。

マスタービルダーに昇格する以前にJohn Cruzが監修に携わったモデルにはJohn Cruzスタンプ(通称JCスタンプ)が入っており、それらのモデルは現在でも非常に人気が高い。

Fender Custon Shop黎明期からRelic部門に深く関わっていた彼が後にレリックマスターと称されるのも当然であったのだろう。

マスタービルダー昇格

SRV No.1 Stratocaster

Team Builtセクションを経て2003年、John Cruzは晴れてマスタービルダーへと昇格。

そして翌年2004年には氏の最も有名な作品の一つであるスティービー・レイボーン・トリビュートモデル"SRV No.1 Stratocaster"の製作を100本すべて行うという偉業を達成する。

以降もジェフ・ベックの"Esquire Relic"、イングヴェイ・マルムスティーンの"Duck"、ジョン・メイヤー"Black 1 Stratocaster"、ゲイリー・ムーアの1961年製サーモンピンクのストラトキャスターなどを製作、現在でも人気の高いトリビュート機種にはすべて彼が携わっているといっても過言ではない。

アーティストモデル以外でもリアルなレリックと独特のサウンドから彼の作品の評価は高く、名実ともに人気ナンバーワンビルダーとなったのだ。

筆者の主観ではあるがJohn Cruz氏とCunetto氏のRelic加工は比較的共通点が多く、特にコンター部の塗装剥がれから下地を見せる点、ピックガードの灼けや汚れの質感、ウェザーチェックが薄いもしくは入っていない点など他のFender製品ではなかなか見られない独特の雰囲気が印象的だ。

"Fender社のMaster Builder"として~退社

NAMM 2020でインタビューを受けるジョン・クルーズ

その後もFenderを代表するビルダーの一人として常にバックオーダーを抱えるほどの人気を獲得し、アシスタントであったVincent Van Trigtもマスタービルダーに昇格するなど後進の育成にも力を注いだ。

Fender社のみならずギター業界全体への貢献度も計り知れないほど大きくなった最中、あのショッキングなニュースが流れたのである。

アフリカ系アメリカ人に対する暴力的な抑圧への反対運動である""Black Lives Matter""の活動が熱を帯びてきていた中、John Cruzは自身のFacebookでアフリカ系アメリカ人差別と捉えられても致し方ない投稿をしてしまう。

"I Don't Know What You Mean By Protesters On The Freeway.
I Came Through No Problem."

暴力的な画像と合わせて上記の文言が添えられた投稿は、実際に差別的でジョークにしてはかなり趣味の悪い内容であった。

そして様々な人種のスタッフを抱え、世界中にシェアのある楽器を生産するFenderにとってその投稿は不適切とみなされJohn Cruzは33年の月日を共にしたFender社を去ることとなったのである。

ビルダーとしての特徴

John Cruzのビルダーとしての特徴

 

前項では華やかだった過去とあっけない終焉について紹介させていただいたが、ここからは彼自身から少し離れ、彼の制作するギターの特徴について述べていく。

極上のレリック加工

極上のレリック加工

まずは"レリックマスター"とまで称される彼のレリックの加工精度の高さだ。

前項でも記した通りVince Cunettoからの影響が感じられる部分も少なくないが、確実に他とは一線を画す独特かつ世界トップクラスのRelic技術といっても過言ではない。

極上のレリック加工2

特に塗装のダメージ加工が抜群にリアルで、カスタムカラーの下から覗くアンダーコートの白地や、サンバーストフィニッシュのリム(中間色部分)のフェードや落ち具合などはFenderのビルダーとの比較でももちろん、他ブランドと比較しても群を抜いている。

極上のレリック加工3

また同じくマスタービルダーである故John EnglishやJason Smithなどに比べるとやや大柄で大胆な仕上がりのウェザーチェック、ポールピースの腐食による色移りが入ったピックアップカバーや灼けが再現されたガードなどはヴィンテージさながらの雰囲気をギターに宿す要因となっているであろう。

極太のトーン・サウンド

そして何といってもギターキッズにはたまらない極太トーンだ。

これは自身もハードなロックギタリストであるJohn Cruzだからこそ作れるのであろう、Fenderギターの音ではあるがどこか男臭く、100~250kHzあたりの押し出しの強いミドルレンジが作用し、良い意味で"うるさい"存在感ある音に仕上がっている個体が多い。

元来SRVフリークであったJohn Mayerを筆頭にギターフリークがこぞって使用するのもうなずける、リードトーンに必要なすべてが詰まっている極上のトーンなのだ。

John Cruz自らSRVサウンドをイメージしてハンドワウンド「Bone Tone」ピックアップが搭載されたモデルはさらにキャラクターが際立っている。

骨太のサウンドのシングルタイプ好きにピッタリ

John Cruzの制作するモデルは骨太サウンドのシングルタイプ好きのギタリストにとっては"アタリ"のモデルが見つかりやすいだろう。

選定するポイントとしては5、6弦の音圧があり、なおかつぼやけない個体をお勧めしたい。

基本的にどの個体も他のビルダーの作品に比べれば下の出方が強いのだが、John Cruz氏の作った"アタリ"の個体は鉄の塊がぶっ飛んで来るようなサウンド感を得られる。

また、ただ低域の音量が大きい個体ではなくしっかりと巻き弦感が聞き取れるというところも重要視したいところである。

そしてハーフトーン時の引っ込み感が少ないのも外せないポイントだ。

通常ビルダー物やハイエンド系を含めほとんどのストラトタイプのギターのハーフトーンは度合いはあるにせよどうしても音が引っ込んでしまう。

SRVやJohn Mayerなどハーフトーンでもしまりのある音を期待するプレイヤーは非常に多く、通常であればコンプレッサーなどを使い平均点を取っていくしか方法はないのだが、John Cruzの作品にはそのバランスが非常にちょうど良い個体が多い。

モダンスペックにこそJohn Cruzの本領が発揮される

John Cruzの本領を知りたい方にはモダン・スペックを採用した個体を是非とも試してみて欲しい。

以前Fender Custom Shopで"ビルダー本人が手元に置いておきたい楽器"をテーマに、各マスタービルダーがそれぞれ楽器を製作したBuilders Selectという企画シリーズがあった。

Yuriy ShishkovやGreg Fesslerなどトラディショナルに忠実なスペックの楽器を製作するビルダーが少なくない中、John Cruz氏が製作したのは※HSSピックアップレイアウトにS-1スイッチを搭載したスーパーストラトに近い楽器であった。

※Fender社はSSHレイアウトをHSSと表記する。

あくまで憶測ではあるのだがSNSのアイコンやアップされる画像の傾向ではかなりのハードロック小僧であると予想される氏にとって、無難なヴィンテージスペックの楽器よりも比較的モダンでヘヴィなサウンドにも対応できる楽器の方が、個人的な好みをフル解放しパッションを込めて製作している印象だ。

実際にSRV No.1ストラトのレプリカを製作した翌年にBuilder Selectとして100本製作された'62ストラトキャスターにもS-1スイッチが搭載されており、そのロットの楽器をフェイバリットとして挙げるプレイヤーも多いことからもJohn Cruz氏製作のモダンスペックギターにはハズレはない。

現状・今後の相場観

ここまで読み進めた方の中には氏の経歴や作品の特徴、個体の選定ポイントに触れ、改めてJohn Cruz作品のサーチを始めようとしている方もいらっしゃるだろう。

そんな中Fender退社が決まってほどない中、現状・今後の相場観が気になるところではないだろうか?

実際、今は亡きJohn Englishやカスタムショップの立役者であるJ.W.Blackの作品のように高騰を続ける楽器は少なくない。

現状で国内で流通しているものに関しては新品は出回っておらず、中古では概ね¥600,000〜¥1,000,000のレンジで推移している。

John Cruz作品は現役時代も人気による品薄から高騰が起こっていたということもあり、騒動から数カ月たった現在、2020/9月調査時点では国内市場では大きな値上がりは見受けられないようだ。

だが、海外に流れている個体も多いことが楽器店筋からの情報で入ってきており、国内流通のタマ数は徐々に減っている印象を受ける。

また入荷しても今後が読めない状況では、国内の楽器店も現状ではあえて市場への出品をキープしている店舗も少なくないのではないかと予想もつく。

楽器事態のクオリティから鑑みて値崩れすることはまず考えられないと筆者は考えており、個人的な今後の予想としては、今後1-2年のうちに徐々に値上がりし始めるではと予想している。

海外の取引サイトであるReverbでは"SRV No.1 Stratocaster"は2020/9月調査時点で500万オーバーとかなり強気な価格付けなされており(正直強気すぎると思うが)、明らかに今回の騒動を受け、値付け側の意識は変化している。過去のアーティストモデル、ワンオフモデルなどは個体数が少ないため高騰の傾向が顕著に現れるのではだろうか。

最後にまとめ

今後の動向としては、個人ビルダーとしてブランドを立ち上げるのか一番の注目ポイントではあるが、倫理的観点を理由にリタイヤした以上完全にシーンに受け入れられるには多少なりとも時間が必要であろう。

楽器製作者としての評価はもちろんのこと、Cunetto Relicの監修やアメリカのギターショップ"Wildwood"とのコラボレーションモデル、さらには元アシスタントのVincent Van Tright作品の評判の良さから監修・プロデュース能力に長けていることも氏の魅力であるため、現役復帰は叶わなくても何らかの形でギター業界に貢献して欲しいと筆者は願っている。

今後の動向も要チェックしていきたい。

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